NEWS&BLOG

新着情報&ブログ
TWEET

第23回 2025年8月 M工房議事録 前編

2025.12.22

かめっち先生が、M氏の運営するM工房について何人かと話しました。その様子の前編をお届けします。

~園地視察(ベビーリーフ、小松菜、キャベツなど)~

M「この畑ではベビーリーフや小松菜、リーフレタスなどを育てている。以前は年間6回転だったが、需要増加に伴い現在は9回転程度まで回している。この圃場の特徴として、土壌に酸素を送る資材(オキシ?)を導入しているが、これにより根域が従来の1cm未満から倍程度まで伸長し、茎の倒伏がなくなった。また、播種前の太陽熱消毒の徹底と、73棟あるハウス全体でキク科とアブラナ科を輪作させることで、菌密度上昇による連作障害をほぼ防げている。」

K「9回転となると季節ごとに発芽率も変わると思うが、各季節でどのような点に注意しているのか?」

M「最も厳しいのは夏場だ。特にレタスは最低気温が25度以下にならないと発芽しないため、夕方以降に灌水してハウス内温度を下げ、発芽環境を整えている。また夏場は、播種前の種子の冷温処理と水分調整が非常にデリケートになる。冷蔵庫内で完全に発芽させてしまい、それを急に35度以上の環境に播種すると徒長してしまい、シュートが弱く倒伏したり低品質になったりする。種子を冷蔵庫で水に浸す時間は、分単位の精度が求められる。」

K「それは種子の見た目で判断できるのか?」

M「繰り返し作業する中で分かるようになる。言葉では説明しづらいが、発芽直前のぎりぎりの状態を見極めている。」

O「畑を見ると、草丈や葉色が非常にきれいに揃っているが、例年このように揃いよく育つものなのか?」

M「今年は特に揃いが良い。以前は3割程度が倒伏しロスが多かったが、太陽熱消毒の回数増加、土壌への酸素供給、畜産由来の堆肥(JAS認定農家推奨)の継続により、地力が向上してきたと感じている。」

O「その倒伏はどのように発生していたのか?」

M「根元近くが褐変し、そこから折れる形で倒伏していた。」

O「それは土壌病原菌のフザリウムが原因である可能性が高い。フザリウムは40度以上で14時間加熱すると死滅するため、繰り返しの太陽熱消毒で菌密度が減少し、健全な品質につながったと考えられる。」

M「土壌についてはさらに研究したいと考えている。現在は20cm耕起しているが、10cmまで浅くする方向で検討中だ。理由は、土壌の保水性向上と、根域が2〜3cm程度しかない中で堆肥成分を深く入れすぎても効果が薄いためだ。また、過度な耕耘で土壌構造を壊したくないので、半耕起に近い形での栽培を目指している。」

Y「収穫は手作業で行っているのか?」

M「国内メーカーの収穫機械も試したが、切断面が粗く製品品質が落ちるため、最終的にアメリカ製のシンプルな収穫ユニットを導入した。これにより葉への過度な接触を防ぎつつ、手収穫の4倍の速度で作業できる。ただ、国内に取扱業者がなく、フランス経由で購入せざるを得ず、本来5万円の製品を15万円で購入しなければならないのが残念だ。」

H「見たところ構造は非常にシンプルで、マキタのインパクトドライバーを使用しているので、工作が得意な農家とキカイヤの職人で製作できそうだ。」

K「ベビーリーフは、お茶の二番茶のように、収穫後に再生した葉を再度収穫するサイクルは取らないのか?」

M「試したことはあるが、品質が落ち病気にもかかりやすくなるため、現在は初回収穫後すぐに次の播種に移るサイクルで運用している。」

~加工場視察~

M「この加工場の総責任者はベトナム人のAさんに任せている。彼女は特定技能2号に合格しており(日本人の一般雇用と遜色ないレベル)、最近は日本語能力試験N2も取得した。」

F「他にもベトナム人労働者は何名いるのか?」

M「畑に1名、加工場に2名いる。」

Y「繁忙期や閑散期はあるのか?」

A「需要は夏場に減少するが、9月過ぎから再び上昇する。週単位では週末に向けて出荷量が増える。月曜から水曜は約6000袋だが、木曜から金曜は約10000袋の生産が必要になる。」

Y「出荷量にそれだけ変動があると定時帰宅が難しくなると思うが、週初めに袋詰めしたものを冷蔵保存し、週末出荷分に充てるような対応は行っているのか?」

M「行っている。冷蔵貯蔵技術が重要なカギだ。以前は7度で保存しロスが多かったが、2度での貯蔵に変更してからベビーリーフの品質が保持されるようになった。これにより2日程度の冷蔵保存が可能となり、ラインでの袋詰め量を平準化できている。」

K「ラインにいる4名のうち、高い位置で葉を混ぜている方の作業は何か?」

M「彼女は、畑から運ばれ土や石、腐葉を除去した葉を均等に混ぜ合わせる役割を担っている。8年目のベテランだが、この作業は難しく経験の浅い者には任せられない。」

K「ということは、今見ているラインとは別に選果室のような場所があるのか?」

M「その通りだ。まず畑から運ばれた葉が品種ごとの袋に入れられて選別室に送られる。選別後、ラインへ運び、多品目の葉野菜をバランスよく混ぜ合わせる。機械に指定重量(例えば10g)を設定し、その重量に達すると直下の袋詰めユニットへ移送される。袋詰めユニットでは、軽い葉野菜を袋の下部に落とし、熱シールできるよう袋を上下させる機構があり、これがこのラインの最重要部分だ。その後、1名が袋を段ボールに詰めて作業が完了する。選別室には赤外線異物除去システムもあるが、導入の是非を検討中だ。また、自動段ボール製函機の導入も悩んでいる。」

かめっち先生の旅はまだまだ続く(毎週月曜日更新)

一覧へ戻る