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第6回 2025年7月_山梨紀行 その1

2025.08.18

カメッチ先生がお役人カイギで知り合った、山梨県庁のスーパー公務員Nさんを訪ねての山梨紀行です。3つに分けてお届けします。

 風土記の丘農産物直売所

この日は、まず甲府南インターの出口からすぐの所に位置する直売所にて待ち合わせした。事前に、Nさんはご自身で農業もやられているということを聞いていたため、バックヤードで納品作業をしているということは想像に難くなかった。

この直売所は9時開店なのだが、7時40分時点で30人ほどの県外者が列を作って並んでおり、中には椅子を持参している方たちも見受けられた(Nさんが、「彼らは訓練を受けてますから(笑)」と表現していた)。お目当てはこの時期の桃・すもも・トウモロコシといったところであり、特に桃の集客力は目を見張るものがあるとのことだ。少ししてNさんと合流し、ご厚意により直売所のバックヤードや、各品目の値段について教えていただいた。Nさん曰く「桃は、30×20×10程度の箱に、6個程度入る小さなサイズを入れて、3000円弱になる。このパターンだと贈答用のような気を遣った梱包が必要ではなくなるため、精神衛生も含めてかなり歩留まりがよい。手数料も15%なので、農協の25%よりも少ない。ちなみに農協は現在桃はキロ1000円くらいで推移しているので、こちらも悪くない価格だ。」と教えていただいた。

続いて、「トウモロコシについても、Mサイズで1本90円、Lサイズならば1本140円なので、こちらもかなりやりがいがある。私はサニーショコラとドルチェドリームという品種をメインに行っているが、とても濃厚な甘みでおいしい。最近のトウモロコシのトレンドは「萎びない」ことで、ここに強い品種が優先的に選択されている。逆に言えば、それだけ消費者がしなびたトウモロコシを忌避しているともいえる。」と教えてくれた。

移動中のお話

農産物直売所から農園までの移動時間中に、これまでの来歴を話し合った。

Nさんは「私は現在二つの名刺を使って活動している。一つはおなじみの山梨県庁、もう一つは山梨総合研究所の研究員としての名刺。後者に関しては、副業申請等が面倒なので、あくまで籍を置きながら、お金は一切貰ってない状況だ。」と教えてくれた。私が「お金をもらわずにボランティアでやっているのはかなり負担にならないか?」と尋ねたところ、「それはそうだが、このシンクタンク的なところに在籍していることで得られる新たな人的ネットワークがあるので、自分自身が今後やりたいことにそれらを有効活用する、いわば先行投資のように考えればかなり美味しいのだ。」と教えてくれた。このような柔軟さと、農業を行いながら県職をこなし続けるというタフさが、Nさんの強みなのだろう。

その後、私が「スマート農業関連の博士研究を行ったが、人口10万以下の街の地方行政職では、博士としての研究期間がキャリアとしてカウントされず、給料も一般の大学卒と同程度だった。それでも、普通の自治体はこんなに面倒くさそうな人間を採用しないので、塩尻市には感謝はしている。」と話したところ、「私は農業部門の技術士資格を持っているが、これが現場の方たちに響くケースが多く、かなり重宝している。」と教えてくれた。この技術士についてきちんとした知識がなかったので調べたところ、農業インフラ(畑の潅がいシステム(はたかん)や水田の水システムなど)を中心に、農業に関わるハード技術を網羅的に理解する難易度の高い資格のようだ。これを持っていることで、発言に説得力が増すのは当然だと感じた。

その流れで、Nさんの経歴についてもお話ししてもらった。「現在、自分は清里の有機農業グループに対して、共同(例えば組合を設立するなどを通じて)で販売することによってロット自体を大きくし、効率的かつ単価を安定させるサプライチェーン構築の事業提案などをしている。有機農業のプレーヤーは、一昔前は宗教のようなスタンスで有機農業を行っていたので、経営関連の提案は全くと言っていいほど刺さらなかったが、最近の40代のプレーヤーたちは、有機農業を通じてお金を儲けていきたいというマインドセットの方が多くなってきており、少しずつ話がかみ合うようになってきた。」と教えてくれた。

また「過去にはシンクタンクに3年ほど出向していた経験もあり、そこでいろいろな事業に応募したため、採択されるための応募書類の書き方などを何となく身に着けることができた。この時は、民間の方との協業が多かったので、例えばJR東日本との共同事業が不採択だった際に、その社員さんから、改善点を指導されるなど、いろいろなことを経験させてもらった。また、シンクタンク時代の研究テーマに、『萌えグッズと農業を関連させると売り上げ動向にどのような影響を及ぼすか』といったものがあり、そこがきっかけで『萌え』にハマった。現在は在来野菜の萌えキャラを発案しており、今後はキャラCVなども当てていけたら面白そうだと思っている。」と明かしてくれた。この多岐にわたる業務をすべて自分の糧にできているのがNさんの優秀さだろう。おそらく物事を動かす際の力点と重要なものが早い段階で見えてくるので、それらを自分の頭の中でリンクさせて、さらに発展させていく、ということができるのだ。今までお会いしたお役人カイギの方たちは、かなり伴走者というところに特別な能力を持つ方が多かったが、Nさんは当事者として事業に人を巻き込んでいけるタイプという印象を受けた。

その他にも、Nさんは、ひまわり市場の社長やサラダボウルのT氏など、県内の主だった現場のキープレーヤーとはあらかた良好な関係性を維持している。新鮮な現場からの情報が常に入ってくる仕組みをきっちり確立している点も、素晴らしいアンテナのはり方だと深く感動した。これもご自身で農業をやっていることと、技術士資格、さらにサッカーに例えると、Nさんのフォワードとしての、相手からのパスを引き出すポジショニングスキルの賜物なのだろうと思った。要は、Nさんはゴールが決まる雰囲気を持っていて、そばにいると面白いことがどんどん生まれてくる予感があるのだ。

そんな中、現在最もやりたいことは何かと尋ねてみると、「今後は現場の普及関係か、より研究に特化したことがやりたい。過去に富士通と気象データのモニタリングを通じた害虫の発生予察を行い、かなり精度の高い結果を得たという成功体験がある。スマート農業や、現場レベルでの栽培技術改善などにはものすごく興味があるし、畑を実践している自分にしかできないポジションだとも感じている。」と話してくれた。この辺りは、自分の所属している一般社団法人ALFAEが持っている人的ネットワークやノウハウなども動員して、Nさんの圃場におけるスマート化、みたいなことを実現できたら面白いかもしれないと思った。

…その2へ続く(毎週月曜日更新予定)

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