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第13回 この「なんか、変」な世界。

2024.02.14

 

 文章にしてみて、自分自身を思い出したり、改めて気づいたりすることがあるものです。例えば、こんなこと。

 私は、いろいろと変なものを持っている。

 前回のコラムのことを思い出してみましょう。私の所有するあるアイテムがお話の中心でした。それは。

 水戸黄門フィギュア。

 そもそもフィギュアというものは、古代文明の時代からある人類普遍の玩具だそうで、「本来大きなものを、小さく緻密につくる」という万国共通の趣味の産物だという話を聞いたことがあります。

そのフィギュアを複数配置して、「水戸黄門ご一行およびその脇役一同」という団体演技にすることで、「黄門様ご一行の織り成す世界観」を目の前で繰り広げることができるとは。実にイカして(死語)るじゃありませんか。

テレビでは「悪事露見→悪役逆上→乱闘開始→中止命令→印籠提示→悪役萎縮→総土下座」というパターンがまさに盤石なんですが、これを完全に破壊しつくしたシュールな世界。それを私の教え子たちは、こともなげに創り出してくれたのですよ。それが、こんな世界なのでした。

最近、「シュール」という言葉は便利によく使われますね。「超現実」「非日常」みたいな意味が本来だけど、それに加えて「なんか、変」というニュアンスが加わっているように私は思っています。この「なんか、変」という感じがいいんだな。もう少し突っ込めば、これに「ゆるさ」とか「脱力」という要素も混ぜて、ぐるぐる攪拌したような。

これを、この文章のなかでは「ゆるシュール」と呼ぶことにします。

「ゆるシュール」には、だらーりとした魔力があります。

そして私は、子どもの頃からこの「ゆるシュール」の魔力に取りつかれていた。

その証拠が、現存する私の恥ずかしいコレクションのなかに、しっかりと残っているのです。これをご披露することで、読者の皆さまを「ゆるシュール」の世界にご案内~、というのが今回の私の魂胆であります。

これが、問題の品。ご覧ください。

これが、「点取り占い」。

ご存じの方、おられますかなあ。昭和の時代に駄菓子屋なんかで売られていた、子ども向けの「おみくじ」です。小学生だった私はこれを買っては、その「ゆるシュール」な世界に頭をくらくらさせながら魅了されていたのです。

未開封状態で保管していた私のコレクション。これを放出いたしましょう。これは10年以上前、ネットで販売されているのを見つけて大人買いしたもの。1パッケージ16枚の「点取り占い」が入っていました。こんな感じ。

これを、実際にひとつずつ開封してみますよ。私も「点取り占い」を自分で開くのは本当に久しぶり。何が出るかな。うー、わくわく。

これ、基本はおみくじですから、広げてみると何やら「お告げ」「警告」「指針」のようなものが短文で書いてあるのです。でも、これがとてもゆるシュールなのだ。

では、最初の1枚。

なるほど。これは「将来のための警告」っていう感じかな。買い物の際にはお財布を忘れちゃいけんね。昭和チックなイラストも味があるなあ。はいはい。

では2枚目いってみよう。

おみくじには「失せ物」についての予言がかかれていたりするから、そのことかもしれないが、なんか、変。

「出てくる」とも「出てこない」とも言わずに、いきなり、このお言葉ですか。

これが3枚目。

これもすごく、何か変。

将来、登山中におにぎりを失うことの予言かもしれないですが、「ころがした」と妙に断定的なのは、まるで自分自身の経験を語ってるみたいじゃありませんか。

このへんで、「点取り占い」自身に別人格があって、自分のことを勝手にしゃべってるのでは?という疑惑がでてきます。

そして、4枚目。

うう。持っている私の指がふるえているのがおわかりでしょうか。

点取り占いは明らかに人格をもっていて、これを読んだ人に自分の意志をぶつけていますよ。いやはやこれはこわい。点取り占いに頭をなでられたら、いったいどんな気分なんだ。

5枚目。

また出たぞ。これなんか、普通のおみくじなら「落とし物は出てくるかも」程度の記述だと思うけど、点取り占いはその拾得物の取り扱いまでを高飛車に聞き返してくるのですよ。

これを読んだ私は、いったいどうすればいいのですか。

さて、6枚目だ。

 

もう、めまいがしてきた。これはもはや「占い」とは言えん。そもそも「おみくじ」なんだから「神様からのメッセージ」だと思えば、以後「点取り占い」と敬称付きで向き合うべきじゃなかろうか。なんだか自分も、点取り占い様のご意志のままに「どこでもくすぐってくださいよう」という気分になってきた。

これはやばい。

7枚目。

ははあああ~。点取り占い様に対し、畏怖しか感じなくなりつつあったこの私に対し、このようなありがたいお言葉。

これで明日から、まっとうに生きていけますですよ点取り占い様。ありがとうごぜえますだ。

そして8枚目。

ぐわーん。点取り占い様は、なにもかもお見通しでした。

1パッケージ16枚の点取り占いの、たった半分の8枚を開封しただけで、この茫洋とした世界。世の中には「なんか、変。」と感じることはたくさんあるけれど、「点取り占い」のもつ「なんか、変」は圧倒的に超絶したブラックホールだ。

この世界観が巻き起こしてくる波動、これを「ゆるシュール」と私は名付けたいのであります。

残り8枚も、開封してみました。

読者の皆さまお一人おひとりで、この「ゆるシュール」世界におわします「点取り占い様」のご託宣をお受け取りください。

 

 

はい、お疲れ様でした。

この「点取り占い」という商品は東大阪市のワカエ紙工で製造販売されていましたが、惜しくも2017年に廃版となりました。これはもう文化財だと思うので再生産を切望しているところです。

 さて皆さま。この「点取り占い」は私のコレクションの中でも、その「ゆるシュール」な存在感においては、確かに抜きん出た存在ではあります。

しかし。

もう一点、私の大好きなアイテムがあるのですよ。私の「ゆるシュール世界」で、点取り占いと双璧をなす逸材が。

 

この項、次回に続きます。

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