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第3回 「雑談部」に入ろう!

2023.07.19

 連載2回目は「雑談部」という言葉を出して強制終了にしてしまいました。

もう少し内容が想像できる言葉ならよかったのに、確かに「雑談部」はあんまりです。

 

まずこのざつだんぶというものについて解説しましょう。

 

 

 

中学校以上の学校には「〇〇部」という課外活動があります。〇〇の部分にはスポーツや文化芸術のジャンルが入り、「帰宅部」というのは「部活やってません」という意味ですね。

ということは「雑談部」は「雑談」を行うための部活動だという意味になるけど、本当にそれでいいのか?ですね。

 

はい、それでいいのです。

 

校長だった私は全校生徒の前でこう宣言しました。

「今日から、私が顧問となって『雑談部』というのをつくります。活動内容は『楽しく雑談をする。』これだけです。入部希望者は、校内で私をみつけて『雑談部に入ります!』と宣言してください。その瞬間から、あなたは雑談部員です。」

 

子どもたちは目をまるくしていましたが、さらに続けて。

雑談部員は、休み時間でも放課後でも状況が許すのであれば全力で雑談に取り組むこと。

ただし内容は「雑談」にふさわしくなければならんよ。「まじめくさった重要なこと」とか「成績など利害に関わること」などは実にふさわしくない。「自慢話」なんか最もよくない。

 

 

「お気楽でゆる~い話」を「何時間でもだらだらと続けられる」。これが立派な雑談部員というものです。

 

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私が今から20年以上前に経験した、歴史に残る雑談例を紹介しましょう。

場所は岡山市内の某居酒屋。雑談者は現在71歳と65歳(←これ私)の男性。

 

雑談のお題はスイカは野菜か、くだものか。

 

居酒屋が閉店時間になったため打ち切られましたが、双方一歩も譲らず見事な循環(ループ)をみせた名雑談でした。

私は、主にこのように主張したのです。

「スイカはくだものである。なぜなら、ごはんのおかずにならんから。」

 

スイカをおかずに白ご飯をもりもりたべられますか。白い部分を浅漬けにするというのはスイカの二次的な使用だからだめです。

赤くて甘い部分がおかず??それこそ無理というもの。お米とスイカ、双方に対して礼を失したる所業ではござらぬか。

 

我ながら見事な一太刀である。これに対する相手はこう切り返してくる。

「スイカは野菜である。なぜなら、うちの畑でとれるから。」

 

ぐわーん。なにやら不思議だが妙に重厚なこの説得力。渾身の一撃を難なく受け返され、反動で頭がくらっときたが、私は気丈に問いただす。

「むうう。して、そのココロは?」

これに対して相手は悠揚迫らずこう返したのだ。

 

「うちの畑にはきゅうりがなっておる。きゅうりは野菜じゃ。その隣にはスイカができる。きゅうりとスイカは親戚みたいなものでござるな。ゆえに、スイカも野菜。」

ちーん。

(何だか剣豪小説みたいな書きぶりになっているが、今思い出した。雑談相手は剣道部の先生でした。)

 

 

ここまでくるとさすがに私もわかってきたよ。

これこそ雑談だ。これはどっちも正しい。永遠に引き分け、このまま果てしないループ!でいいんです。

食品分類表では果実に分類されているスイカも、そもそも植物学的には野菜。そう、どっちも正しい。

肝心なのは、雑談者である二人のおじさんの生活のどこに「スイカ」が置かれているか、なのでござるよ。

私はごはんのおかずを中心に語りたかったし、相手は自分の畑が意識の中心だったんですね。

 

 

 

このお題は、私自身が「雑談」の本質をつかむためにとても役に立った道しるべみたいなものです。

「雑談」の本質って、そもそも何なんだ???

今回のお話しは、なんとか「まとめ」みたいなことができそうですね。

 

 

 

念のために大事な点を整理しておこうか。

①雑談は、楽しい。

②雑談には、勝ち負けがない。

③雑談は、いくらでも続けられる。

④同じ相手であれば、過去の雑談を何度でも繰り返すことができる。

⑤そして、そのたびに、楽しい。

 

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 こんな雑談を成立させるために「絶対に必要な条件」というものがあります。

その条件が、これなんです。

 

「私は、この人と比べて、強くも弱くもない、という人間関係」

 

相手と自分が、完全に対等な関係で、それぞれの思いをキャッチボールしている。

これこそ本物の「雑談」です。力関係に差がある人の間では、雑談は成立しません。

高い位置から投げるボールは当然速いから、低い位置の人は捕りにくいし返球だってしんどい。「いくらでも続けられる」なんて到底むりむり。

 

「水平な位置関係で、思いのキャッチボールをたくさんすること」が、人と人が繋がっていくことの、基本的なトレーニングになると思うのです。

そして、そのまた最小サイズの経験が、日々の生活の中にある「雑談」。

 

 

さあ、雑談部に入ろう。自分でつくろう。

 

身近なお題をいくつかためておくと、すぐにでも始められますよ。

 

・おでんの具の「王様」はだれか。「首相」はだれか。「官房長官」はだれか。

・五目中華そばの「五目」のレギュラーメンバーは何か。

・袋入りラーメンのベスト3を列挙し、推しの根拠を示せ。

・冷やし中華の販売は本当に夏季のみでよいのか。

・月見うどんのタマゴの黄身は、いつどのように食べればよいのか。

・白ご飯に全くあわないおかず、というものはあるのか。

・人類の半数は、レーズンがきらいだ。

 以下、記入自由。

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