第30回 「めいきょくきっさ」のことを語ってみた。
2026.05.22
前回のお話は、この画像で唐突に終わってしまいました。

さらに、画像の一部を拡大したりして。

拡大すればすぐ読めてしまうのが「名曲喫茶・柳月堂」という屋号ですね。
そうです。今回のお話は「名曲喫茶」なるものから始まります。
まずは「名曲喫茶」という言葉自体、どれだけの人に認知されるのでしょう。これは年齢によりほぼ見当がつきますな。
私は民間のフリースクールのお手伝いをしているので、そこに通ってくる子どもたちに聞いてみた。
「めいきょくきっさ、って知ってる?」
予想通り、全員が「知らない」。
聞いたんだから、正解を説明しないといけません。しかし、名曲喫茶とはどう定義づけられているのでしょう。とにかく私にとって一番最近経験したのが冒頭の画像にある「名曲喫茶 柳月堂」だから、そこのことを中学生・高校生に説明しようとしたんだけど、これがなかなかむずかしい。
「めいきょく、ってなに?」「ええ音楽、という意味」
「きっさ、はカフェのこと?」「そうよ。」
このやりとりで確実に伝わったのは、名曲喫茶とは「ええ音楽が流れてるカフェ」だということだけですね。
しかしこれでは「名曲喫茶 柳月堂」について私が伝えたい情報はほぼゼロではないか。これではいかん。
孫ほどの年齢の子どもたちに、コテコテの昭和文化を何とか認識してもらいたいものだ。必死になって「私の名曲喫茶像」を言葉で説明しましたよ。こんな感じで。
1 名曲喫茶にいる人たちは『音楽を鑑賞する』ことが第一目的なので、たいてい単独で来店している。グループで名曲喫茶、はありえん。ひとりでじっと音楽に浸るのが名曲喫茶なのだ。
2 もし複数で来たとしても、会話は厳禁である。小声でも話なんかしたら店のスタッフにぜったい叱られる。または他のお客さんににらまれる。
3 たんすみたいにでっかいスピーカーがある。音楽はかなりの大音量である。スピーカーだけでなく、音楽のためのオーディオ装置はすべて高級品で、外国製であることが多い。
4 音源はかなりの確率で『レコード盤』である。
(この部分の説明に最も苦労するんですよねえ。普通の中高生にレコード盤なんてそもそもイメージすらできんのです。)
5 (レコード盤の説明の補足)
レコード盤がCDと違うのは、音楽が始まるまでに『ぱちっ』『ぽつ、ぽつ』『ざああっ』みたいな雑音(スクラッチノイズ)が入ること。これこそレコード盤の魅力なので、入店してたまたまCDの曲ばかり続いたら正直損した気分になるのだな。
6 そのレコード盤が、店内の棚におびただしい枚数を誇示するように収蔵されている。まるで図書館みたいに整理されていて収蔵リストも完備。店内には「リクエストカード」があり、曲名や演者名を記入して店員に渡しておくと、やがて順番がきて自分のリクエストした曲が流れる、というしかけ。
7 自分のリクエスト曲が流れたときの気分のよさといったら!そりゃもうたまらん。優越感もあるかもしれんが、自分のお気に入りの曲が、高級オーディオ装置で再生されると正直ぞくぞくする。しかも自宅では許されない大音量だぞ。
・・・・このあたりまで熱弁をふるえば、かなりの子どもが理解を示してくれて、「それ、どこにあるんですか?」と言ってくれるやつもでてきます。うれしいなあ。
ところが、私の住んでいる岡山市では、こんな「名曲喫茶」はほぼ絶滅してしまいました。音楽のジャンルから「クラシック系」「ジャズ・ロック系」それぞれに名店が昔はありましたが、今は思い出話の中にしか出てきません。
では、冒頭の画像はどこのことか。
えらく長く引っ張りましたが、今回のお話で役に立つかもしれないのはここから。
店名は、暖簾にプリントされているとおり「柳月堂(りゅうげつどう」。
場所は、京都市左京区。京阪電車の出町柳(でまちやなぎ)駅前にあります。お店の外景写真はあえて割愛。最初の画像「のれん」を探してください。
ジャンルはクラシック。音楽鑑賞に特化したリスニングルームと、おしゃべり可能な談話室の二つのゾーンに分かれています。

この写真はリスニングルーム、広々としてます。
おしゃべりはもちろん、音楽の邪魔になる一切の音を出すことが厳禁。
ノック式の筆記用具はだめ。ページを音を立ててめくる読書も遠慮。ガサガサ音を立ててめくる新聞などもってのほか。上着類をばさばさと脱着することも不可。これも部屋の外でやらなきゃいけないのだ。

レコード盤の所蔵数は10000枚とか。

たんすみたいなスピーカー。木製のホーンは圧倒的存在感あり。
昭和28年、京大理学部卒の創業者がベーカリーショップとして開業したそうな。確かにいまでも「くるみパン」は名物です。昭和56年に一度廃業したが、創業者のご子息が昭和58年に再開業、今に至っているそうです。
国際観光都市京都はインバウンドでむしろ日本人は敬遠気味でしょう。出町柳の柳月堂は、平日にいけば地元の常連さんがゆっくり過ごされている貴重な場所です。

これは店内のリクエストコーナー。カードは店員さんが回収してくれます。
クラシック曲が相手なので、自分のリクエスト曲がかかるまでにはかなりの時間がかかりますが、それもまた楽し。
さて、このお店について、こんなことを書けば、常連さんを困らせるようなことになるかな? やめようかな?? …と思いはしたものの、そこまでの影響力が私の文章にあるとは思えないのでそのままリリースいたします。
京都出町柳、柳月堂に幸あれ。
と、ここでお話はおしまいですが。
途中、ちょっとだけ話題になった「私たちの地元岡山の、絶滅してしまったお店」のことが気になって、頭からどうしても離れません。
岡山市北区表町にかつてあった、こんな看板、覚えている方、おられますか。

話題を変えながら、まだ続く。