第28回 2025年8月 Famlab8議事録4 ~アグリスポーツ~
2026.01.29
かめっち先生が、熊本県八代市の若手農家で結成された一般社団法人「Fam Lab8(ファムラボエイト)」を視察しました。その様子をいくつかの回に分けてお届けします。
アグリスポーツという新時代のコロッセオ
視察から戻ってきた後、雨の日でもできるアグリスポーツということで、4種目に挑戦した。まず第一種目は「お米の等級を当てる」というものだ。自分はい草農家のGさんとコンビを組むこととなり、唯一のfamlab8のメンバーとのタッグに優勝を確信した。今思えばこの慢心が、のちの絶望への布石となっていた。
お米の等級というのは、農産物検査法において定義された1等米、2等米、3等米、規格外といったお米の品質を、籾の状態のお米を見極めて判断するというものである。お米の品質は、①整粒割合(正常に生育したお米の割合)、②粒の大きさ、③重量、④水分量といった項目で決定されるが、特に①について見極める能力を競うという競技だ。
整粒割合についてもう少し詳しく説明しよう。整粒というのは、お米の粒にひびが入ったり、病気になったり、白く濁ったりといった生理的なトラブルがなく、正常なお米のことを示している。農産物検査においては、各農業者から出荷されたお米を検査する際に、任意に抽出されたサンプルを目視により検査して、そのお米の等級を決定するのだが、1等は整粒の割合が75%以上、2等は60%以上、3等は50%以上となっている(ちなみに2023年の新潟県産米の1等米比率は5%以下だった)。
農産物検査員の資格を持っているTさんによれば「ずっと見続け過ぎるとゲシュタルト崩壊を起こすので、ある程度の基準を設けて、サササっと進めていくのがコツだ」ということだった。それに従い、Gさんとの共同作業が始まる。最初はあまり違いが判らなかったものの、まず明らかに汚い4番を規格外に置くことにした。そしてこれはきれいだというものを1等に設定し、2等と3等でかなり苦戦した。ただ、ここでGさんが「うちはお米も少しやっているので、その感覚を前提にするとこうじゃないかと思う」という答えに完全にタダ乗りし、結果発表を迎えた(2等と3等は正直見分けがつかなかった)。その結果、見事10問中8問正解し、完全優勝に向けた最高の船出を果たした。

第2種目は「品種を当てる」というものだった。これは1問目と同様に、10パターン用意された籾の状態のお米を、2択からどちらのお米かを選ぶ、というものだった。候補となる品種は①ヒノヒカリ、②くまさんの輝き、③もりのくまさん、の3品種で、ヒントとして①ヒノヒカリは小柄でぽっちゃり、②くまさんの輝きは濃い顔の細マッチョ、③もりのくまさんは薄顔のメタボ、という特徴を事前に与えられ、いざ本番が始まった。
まず取った戦略として、2択の組み合わせが同じ番号のお米を比べ、それが同じか否かによって基準を作る作戦を取った。ヒノヒカリかくまさんの輝きという2択となっている11番と12番を比較すると、どうも違うようにに見えたので、どちらかがヒノヒカリで、もう片方がくまさんの輝きだという仮説を立てる。こうなると、あとは最初に与えられた特徴に基づいて粒を凝視するのみだが、これが難しい。群で見ると違いが何となくわかるのだが、かといって粒で見ていくとその特徴が小柄なのか、細マッチョなのかが判断できない。そうこうしているうちにあっという間に2分が経過していく。このままでは完答すらままならなくなるという焦りから、何となく丸っこそうという理由で11番をヒノヒカリ、もう片方をくまさんの輝きだと仮定して問を進めていく。
同様にして、くまさんの輝きと森のくまさんの2品種を比較している2つの皿(19番と20番)も比較するが、先ほどと全く同じ問題に直面する。どちらも確かに違うことは分かるのだが、どちらがどちらなのか、ということに確信が持てなかったのである。今冷静になって考えれば、先ほどくまさんの輝きだと仮定した番号に戻って比較すればよかったのだが、時間経過に対する焦りで脳が正常な判断を下せず、ここでも直観に頼った判断によって、森のくまさん(20番)とくまさんの輝き(19番)を判断してしまう。その後は、ヒノヒカリ関係は、11番を基準に置きながら比較検討を行っていったが、森のくまさんに関しては、もう一つの基準(20番)に照らし合わせた方法で進めていくというダブルスタンダード戦法を、無意識のうちに取っていた。
その結果、ヒノヒカリとくまさんの輝きに関する比較は全問正解だったが、森のくまさんが絡んできた選択肢は全問不正解で計5問正解という非常に不甲斐ない結果に終わる。くまさんの輝きと森のくまさんを逆に判断してしまったことで、優勝候補筆頭である我々に焦りが付きまとい始める。
第3種目は「おコメ粒を箸で移動させる」という種目だった。ルールは、2人で交代しながら炊飯前の白米を紙皿から容器に移動させ、その際に一人が少なくとも一粒は担当すれば、あとはどのように行ってもよい、というものだった。Hさんから「この種目は平均年齢が低い方が有利」という前情報をいただき、若干24歳のGさん擁する我々に強い追い風が吹き始めた、とこの時は思っていた。
最初は自分が担当することになり、いざ開始のゴングが鳴り響くと、全くと言ってよいほどお米がつかめない。お箸とお米との間に斥力が働いているのでは、と錯覚するほどの掴めなさに絶望を覚え、これ以上もがいていては致命傷になると判断し、10秒ほどでGさんにバトンタッチして逆転ののろしが上がるのを待った、が、Gさんの様子がおかしい。手が小刻みに震えているのだ。「いったいどうしたのか?」と声をかけると「ヤニが足りない」と震える声で答えてくれた。しまった、、わかっていれば小休憩のタイミングで煙草を補充できたのだが、間に合わず禁断症状に苦しみ始めている溝口さんを見守ることしかできない。そしてお米は一粒も移せないまま時だけが無情にも経過していく。
Hさんが実況の中で、「Aチームが驚異的な速さであと7粒だ!」とかなり高いテンションで声を上げる。同時に「Dチームは、、」といった後の言葉に詰まり、「頑張ってください(笑)」と発言したときに、勝負の終わりを悟った。その後幾秒と経たずにAチームが完走を果たした。そのタイムはなんと1分42秒。これまで大学生が出したベストタイムを大きく上回るワールドレコードらしい。悔しいがそこまでの偉業を前になにもなす術がなかった。MさんとRさんを素直にたたえたい。
その後Gさんとバトンタッチし、次の大会のためにお米をつかむ練習をしようと切り替え、箸を握った。すると、どうもお米の重心を狙って横向きに立てるようにすると、斥力を乗り越えて、うまく滑らずにお米をつかめることが分かってきた。もし最初からこの摂理を理解できていればあるいは、、と悔しさが頭に繰り返し巡り続けたが、この悔しさを忘れず、そして新たに培ったお米と箸との高レベルの調和を体に叩き込むことで、1分42秒という偉大な記録に挑みたいと思った。ちなみに結果はダントツの最下位で、タイムすら教えていただけないという罰が下った。

この時点で首位を明け渡し、もう後がない最終種目は「お米の食べ比べによる品種当て」だった。与えられた選択肢は①ヒノヒカリ、②くまさんの輝き、③備蓄米(R3年度産)というもので、最初に3種類をそれぞれ食べたのちに、出されたお米がどの品種かを当てるというゲームだ。3つを食べた時の感覚は、「正直備蓄米がギリギリわかる程度で、ヒノヒカリとくまさんの輝きは全く判断がつかない」というものだったので、もちろん出されたお米も備蓄米でない以外は判断できなかった。一方でGさんは「くまさんの輝きではないと思うが、備蓄米かヒノヒカリかが判断できない」と言ってくれており、ならばヒノヒカリじゃないかと、意を決してヒノヒカリを選択した。
予想の段階ではちょうど2つに分かれ、AチームとわがDチームはヒノヒカリ、BチームとCチームがくまさんの輝きと予想した。これでヒノヒカリならばDチームが逆転で優勝となる、そう思った矢先に、BチームのN君とAさんが「我々は食味のプロだから間違うはずがない」というラスボスもびっくりの強気発言を炸裂させ、一気に会場の空気は緊張感を増す(間違えろ)。そして暫定首位のCチームのFさんとOさんは「ヒノヒカリじゃないことしかわからない」と悩んでおり、勝負のことを考えれば備蓄米を選択してもらえると盛り上がるものの、勝利に飢えたお二人がそのような茶番を弄するはずもなく、くまさんの輝きを最終選択。
そして運命の結果発表。正解は「くまさんの輝き」!ということで初代アグリスポーツ王の称号をCチームが見事手に入れた。本当に強く、王者に値するチームだった。ただただ敬意を表したい。2位はBチーム。N君とAさんというチート級の食味鑑定能力を持った、正直ステロイド級の反則チームだったが、淡々と得点を重ねていくスタイルは、時期王者に最も近い存在と言えるだろう。3位はAチーム。RさんとMさんというムードメーカーと見せかけて、やる時は世界記録を樹立するほどの爆発力を見せるロマンあふれるプレーの数々は、記録ではなく記憶に残る最高のエンターテイメントを届けたのではないだろうか。
ただ、次回優勝するのは我々だ。そのためにできることを今この瞬間から始めようと思う。
かめっち先生の旅はまだまだ続く(毎週月曜日更新)