第24回 2025年8月 M工房議事録 後編
2025.12.29
かめっち先生が、M氏の運営するM工房について何人かと話しました。その様子の後編をお届けします。
~質疑応答~
F「みっちゃん工房さんのお話を初めて伺ったとき、決算を社員全体に開示していることに最も衝撃を受けた。このような情報開示によって得られたメリットはあるか?」
M「最も大きいのは、社員が『このままだと倒産するかもしれない』という危機感を持ち、『自分が頑張れば倒産を免れられる』という経営者目線で作業改善やコストカットに積極的な意見を出してくれることだ。私自身は凡人なので、人の意見も取り入れながら最適解を探りたい。様々な現場の視点が経営側に入ってくる状況を作れているのは、この危機感の共有が大きいと思う。」
B「農業法人はどうしてもワンマン経営に陥りがちだが、仕事の専門性が大きく異なるため仕方ない事情があると考えている。ただ、みっちゃん工房さんは生産と加工を若手社員にほぼ任せている状態に衝撃を受けた。担当を任せる人物をどのように見極め選択しているのか?」
M「Aさんについては、品質管理に対する基準が私と同じだという感覚で主任への任命を決めた。ベビーリーフは品質が命なので、品質管理だけは妥協してはいけないと考えている。他のメンバーなら品質を優先して利益向上を図るような局面でも、彼女なら冷静に判断できると考えた。その一方で、品質管理に妥協しなさすぎて、経営を優先しなければならない時に融通が利かないところもあるので、そのあたりをうまく教育できればさらに伸びしろがあると思っている。」

K「その指摘は非常に興味深い。具体的にどのような局面でAさんの課題を感じるのか?」
M「時期によっては(具体的には秋のように害虫や雑草が少ない時期)、それほど厳密な品質管理・確認をしなくても、ベビーリーフに傷みが出ない。例えば秋はベビーリーフの揃いが良く、注文量も多い時期なのだが、品質管理に時間をかけすぎると、本来もっと出荷できたはずの分の利益を取り損ねる可能性がある。そういった事情も理解して、より臨機応変に対応できれば売上にも貢献できるという話をしている。」
Y「畑の担当と加工室の担当は完全に分かれているのか?」
M「完全に分けている。ただ、一度だけ例外があった。先ほど紹介した圃場担当の若手2名が2年ほど前に大揉めし、主任である女性職員には厳重注意、部下の男性職員にはペナルティとして加工室への異動を命じた。話を聞くと男性職員側の態度にかなり問題があったようなので、加工室の女性職員たちに様子を見てもらったところ、日に日に態度がおとなしくなり、以前ほど頑なな態度を取らなくなっていった。そして1年間加工室で働き切った後、男性職員から畑へ戻りたいので辞職したいという申し出があり、加工室できちんと働き切った努力を認め、畑に戻して現在の状態になった。」
F「Aさんから見て男性職員の働きぶりはどうだったか?」
A「最初はなかなか人の話を聞かない頑固さがあり、正直やりづらかったが、こちらの意見が正しいと分かれば素直に従う柔軟さがあったので、最後は全く問題なく一員として機能していた。」
M「おそらく畑においては、自分も4年間学んできたというプライドがあり、先輩職員に対しても生意気な態度を取ったと思うが、加工については本当の素人なので、明らかに相手より劣っている現状を受け入れることができたのだと思う。」
F「一般職員と主任とで変わったことがあれば教えていただけるか?」
A「一般職員の時は、あまりライン全体を見ずに、自分のポジションで最適な行動をすることに注力していたが、主任になるとライン全体を俯瞰し、どこの動きをどう改善すればよいか見極め、そのうえで相手に伝わる表現方法を工夫しなければならない。主任を始めた当初は、なぜこんな簡単なことが分からないのかとイライラすることもあったが、徐々に自分の伝え方にも問題があると反省し、よりその人が納得できるように伝える努力をするようになった。」
H「主任とMさんとでコミュニケーションや面談はするのか?」
M「できるだけ自分で考えるように促すが、難しい場合は相談に乗るようにしている。具体的に面談の時間を設けるというよりは、ふとした会話を減らさないようにし、その時に私が持っている情報や新しい知識を主任に伝えたり、プライベートの話もしたりと、オープンな関係性でいられるよう取り組んでいる。一方で、何か失敗をした時は反省する気持ちを忘れてほしくないので、頭ごなしに叱るのではなく1週間ほどチクチクとミスを指摘するようにしている(笑)。」

F「そうした結果、成果は出ているか?」
M「特に畑において顕著だが、私が隣の果実堂の畑も見るように促したり、自分たちの畑がうまくいった時には少し大げさに『きれいだ!』と強調したりを続けた結果、自園地を改善することや、他者を意識した観察眼の精度が向上したと思う。」
U「人事評価についても教えていただけるか?」
M「加工と畑とで評価表を分けているが、6段階評価(①できない、②分からないことを尋ねてできる、③通常業務は一人でできる、④非通常の場合も一人でできる、⑤非通常なことも理解し人に説明できる、⑥管理することができる)にして、7つの大項目(収穫、防除、整地、片付け、播種、灌水、除草)と30の小項目を用意し、初級レベルであれば0.1、最終レベルであれば1として足し合わせ、最終的な総合点に1000をかけたものが給料だという考え方をしている。」
B「畑の収穫の項目で『収量を考えながら収穫できる』というのがあるが、この項目の意図を教えていただけるか?」
M「収穫物が実際にパック詰めになった時にどれくらいの量になるか、という感覚を持って作業できるかということを求めている。この感覚は経営において非常に重要で、畑の主任クラスには出荷量がすぐに売上額に換算できたり、出荷スピードの向上がそのまま売上向上にもつながっているという感覚を持っていてほしい。」
H「このような重要事項を見せていただいてよかったのか?」
M「全く問題ない。むしろ評価軸として必要な項目が時代と共に変わることもあるので、ブラッシュアップが必要だ。常に最新のものであり続けられるように、皆様のご意見も聞かせていただきたい。」
K「機械関係のトラブルなども、Aさんの担当なのか?」
A「そうだ。機械の簡単な不具合であれば対応できるレベルだが、本格的な機械系統の故障は業者に依頼している。私が大切にしているのは、致命傷になる前に業者に連絡し、ラインを守りながら保守管理していくことだ。」
M「彼女が誰よりもラインについて理解している。非常に細かいレベルでのカスタマイズもしてくれるので、ラインの設定についてはほぼ任せている。」
かめっち先生の旅はまだまだ続く(毎週月曜日更新)