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第21回 2025年8月 K農園議事録 後編

2025.12.15

かめっち先生が、M氏の運営するK農園について何人かと話しました。その様子の後編をお届けします。

~いちご園~

M氏「イチゴは9月の20日くらいの定植を目指して、現在親株からランナーを切り離して株分けし、徒長せずに健全な成株になるよう育苗を行っています。」

O氏「昨今、夜温が下がらないことから花芽分化が誘導されないという話を聞くが、夜冷はしているか?」

M氏「行っていませんが、そこまで問題なく12月には果実が収穫できます。」

O氏「かなり遮光しているように感じるが30%程度遮光しているか?」

M氏「だいたいそれくらいだったと思います。やはり日が強すぎると潅水を余計に行わなければ枯れてしまう一方で、いったん曇り始めると潅水分がうまく捌けないなどというトラブルにもつながるので、遮光を行っています。」

A氏「ここもハウスの基礎が密に構築されているように思う。やはり台風対策か?」

M氏「その通りです。ただ台風も本当の暴風になってしまえば基礎を堅牢にしても限度があります。台風がここ20年ほど来ていないのは良いことなのですが、台風が来たときにハウスのビニールを取っておくことの重要性などを知らない若手農家が増えているのはまずいかもしれません。風速30m/sまではなんとかハウスも持ちこたえますが、それを超えると、ビニールを外していなければ基礎部分ごと煽られて飛んで行ってしまいます。」

O氏「イチゴの品種はどれくらい行っているのか?」

M氏「イチゴは7品種行っていますが、恋みのりという品種が一番やりやすいです。花が付きすぎずランナーの管理も簡単な上に果肉が固く、甘みと酸味のバランスが良いので、普通のイチゴと比較して作業量が3割程度少なくて済む印象です。他にもセル苗で育てられる品種もありますが、これは生育中の手間がかかるのであまり好きではありません。とちおとめはおいしいですが、着花管理が非常に難しいのであまり増やせません。」

T氏「高設栽培はどのようなスタイルがやりやすいのか?」

M氏「高設栽培については、2段で栽培効率を上げようとする日本のメーカーが多いのですが、そこまで作業効率(腰をかがめて取るのが大変)も面積当たりの収量も向上しないシステムだと思っています。シンプルに一列で整然としている韓国のスタイルが最もやりやすいです。また、排水についても1か所に排水溝をまとめてくれているのがありがたいです。各列からしずくがぽたぽたとこぼれる日本のタイプは結果的に水の抜けが悪く、病気を誘発するうえに足元も悪くなるので、残念ですが韓国製一択だなというのが本音です。」

T氏「そもそも最近の物価高騰で、中古のハウスの引き合いも強くなっていると思うが、増設にあたってコストの削減を実現することはできるのか?」

M氏「おっしゃる通りで、なかなか中古のハウス用骨組みはマーケットに出てきません。しかし、Googleアースを駆使して使っていなさそうなハウスにあたりをつけるという方法もあるらしく、そのやり方をしている近所のおじいさんに問い合わせると、最新の中古ハウス資材情報にアクセスできます。」

O氏「土耕のイチゴもかなりあるようだが、これも観光用なのか? また味は良いという話を聞くが実際そうなのか?」

M氏「これはそれぞれ観光用です。自分も土耕は手間も少ないし品質も良いので非常におすすめだと思っています。よく言われるほど病気が出ることもありませんし、加温にもそこまで燃料を使わなくてよい印象です。ただし、熊本のこの地域は盆地であるため、冬は結構冷え、ひどいときはマイナス5度まで下がる時があります。この時は柑橘の苗が全滅してしまったという話もあります。」

~観光農園~

M氏「ここではりんご、柿、なし、ブルーベリー、柑橘、ぶどう、栗といった多くの品種を育てています。観光のシーズンには、自動草刈り機を走らせたりして、お客さんが楽しめる環境を作る努力を試行錯誤しています。」

K氏「おすすめのリンゴや栗の品種を教えていただけるか?」

M氏「栗は茨城がトップなので、茨城の方が詳しいと思いますが、自分としては最も収量が取れて味も良いおすすめの品種がありますので、それをおすすめします。リンゴも、熊本でもきっちり色が来る極早生品種が開発されており、それをメインに観光農園にも導入したいと思っています。」

T氏「栗は加工がメインになるので、お客さん目線で一年中楽しめるのも大きい。いわゆるフレッシュな果実は旬が消費のピークなので、栗はその点差別化が図れる。」

M氏「ブルーベリーについては、剪定や摘花を工夫することで大きな果実を収穫できるようになります。お客さんは実が大きいほど喜ぶ傾向にあります。ただし、お盆が過ぎてブドウの季節がやってくると、ブルーベリーはがくっと人気が落ちます。こまごまとした収穫を行うのは骨が折れるため、夏のうちにブルーベリーは観光客に収穫しきってほしいというのが本音です。」

H氏「BBQコーナーの頭上にものすごく大きいブドウがあるが、これは何か?」

M氏「これは3倍体のブドウです。敢えて房作りを行わず、1kg程度の大型なブドウを見せることで観光客を視覚的にも楽しませることを目的としています。」

K氏「3倍体ということは、そもそも種を作らないのか?」

M氏「基本的にはその通りです。ただ、結局ジベレリン処理を行うことで玉伸びや着果が安定し、品質が向上するのでジベレリン処理はしっかり行っています。仕立て方はH型か一文字短梢を採用しています。福岡では6本仕立てが普及してきているらしいので、次定植するときはそのやり方も検討してみようかと考えています。」

O氏「これだけ広いと管理も大変だと思うが、どのような点を工夫しているのか?」

M氏「基本的に、どれだけ最低限の作業で切り抜けられるかを考えています。例えばリンゴと梨は指定の農薬がほぼ同じなので、防除を同時期に行ってしまったり、りんごの袋掛けなどの市場での外観要件のための作業などは省いています。」

F氏「この観光農園の所の建物は宿泊用の施設になるのか?」

M氏「元々は地域の見回り用の詰め所だったのですが、今はトイレや作業中の休憩所として利用しています。観光として使える施設としてはまだ利活用の余地がある気はしています。」

H氏「修学旅行などの需要もありそうだが、この辺りはいかがか?」

M氏「一つ向こう側に広い耕作放棄地があり、そこを借りることができればキャンプ場にしたいなと思っています。しかしバスが入りにくいのと、いざバスをチャーターするような観光農業を展開すると、周りからやっかまれるというところで踏み切れないでいます。バス=儲かっていると思う人がいますが、それは間違っています。バスの観光客の単価はそう高くありません。むしろ個人客でたくさん買ってくれる人の方が長期間にわたって利益をもたらしてくれます。」

かめっち先生の旅はまだまだ続く(毎週月曜日更新)

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