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第29回 2025年8月 Famlab8議事録5 ~Hさんのお話~

2026.02.09

かめっち先生が、熊本県八代市の若手農家で結成された一般社団法人「Fam Lab8(ファムラボエイト)」を視察しました。その様子をいくつかの回に分けてお届けします。

Hさんのお話

Hさん「自分はリビングラボと呼ばれる伴走型のコンサルティング会社の経営を行っており、その中でfamlab8さんとつながる機会をいただいた。famlab8は、3年間のスマート農業実証事業に採択され、その企画案の作成のお手伝いもしたのだが、結局リビングラボが3年間の事業に関するコンサルとして選定されなかったため、この3年間で目指す方向性や手法が共有できていなかった。その結果、1年目は大学の先生を呼んだり、現場の求めている技術とは全くそぐわないデジタル技術の導入などが進められ、ちぐはぐな感じが否めなかったらしい。」

かめっち「スマート農業系の話のすべてに通じるが、こだわりを追求していきたい農業者集団に、生産性やら効率性を謳っても、あまり響かないような気はしている。」

Hさん「その通りだ。自分は星野リゾートで顧客満足度について日々考えてきた。その結果、自分にとっての最初に満足感を満たすべき顧客はfamlab8の皆さんだということが理解できた。」

かめっち「なるほど、農業者の満足度が上がるプロジェクトという視点は確かに非常に大切だが、結構なおざりになっている気がする。」

Hさん「このプロジェクトは『省力化』『循環』『魅力発信』という3本柱を中心に考えられていたのだが、1年目はすべてを縦割りで考えていたということが分かってきた。それに対して自分は、これら3本柱のつながりを構造的に示すような計画の立案を心掛けた。そうすると、役割分担的に3要素を満たすのではなく、皆が頑張ったことによって、どのように3本柱の内容が豊かになっていくか、という観点で物事を判断することができるようになる。そしてそれらがうまく回ると、農家はモチベーションが上がり、より利他的・社会的な活動にもリソースを割けるようになる。」

かめっち「実に面白い。まずメンバーに3本柱を含めたプロジェクトの概要を構造的に示し、その中での農家の役割を可視化することで、農家自身も自分が何をしなくてはいけないのかを理解でき、納得感をもって自身の事業に内包することができるということか。そういった小さな成功体験を経験させるために、Hさんはどのようなことを行ったのか?」

Hさん「リビングラボは、その名の通り、小さな実証事業を重ねることで経験値を蓄積し、様々な事業をよりブラッシュアップしていくことが、社会実装に向けた最も近道だという仮説の下に活動している。その文脈に沿って、我々はIT関係、伴走者、ブランディングといった3つの観点からチームを作り、現に存在するfamlab8の魅力をブランディングすることを主軸に置きながら、一方で補助事業の要旨に合致するように報告書を作成するという役割を担った。」

かめっち「すばやいプロジェクト設計によって、農家自身が『できるのだ』という自信を持つことを第一優先しているのが素晴らしい。」

Hさん「我々が満足させたいのは農家である、というのが最も重要なポイントだ。自分は農業現場、特に技術関連で意見ができるほどの知見を持ち合わせていないので、スマート農業をコンサルすることは土台無理だ。だからこそ、農家が最も自信を持っているポイントに口を出すことはせず、農家が一番苦手な魅力発信の部分と、省力化や循環(コーヒーかすと牛糞、米ぬかを混ぜ合わせた堆肥の品質検証など)の部分でのPDCAサイクルをどう回すか、という提案を中心に業務を構築していった。」

かめっち「魅力発信に対する取り組みと、スマート農業とを結びつけるのには苦労したかと思うが、具体的にはどういう報告書で切り抜けたのか?」

Hさん「ご推察の通り、かなり面倒な作業だった。省力化については、ChatGPTによる文書作成業務の省力化をスマート農業として書き出すことはできるのだが、循環については、実際に循環はさせているものの、その効果を検証しようという過程にスマート化は存在しない。また、魅力発信についても、スマート化技術が即座に農業の魅力として伝わるわけではない。一方で、スマート化を前提とした発展のための補助金なので、あまりにスマート化と関係のない主張が重なると、補助金をもらえなくなる恐れもある。」

かめっち「どのように乗り越えたのか?」

Hさん「『スマート農業』という言葉を少し切り口を変えて、『スマートな農業』と捉えるようにした。そうすると、スマート農業が『イケてる、かっこいい農業』というような形で理解できるようになり、そういったかっこよさの中に『循環』や『省力化』といった技術を埋め込んでいけるようになる。やはり魅力発信の部分でやる気のある若手に前向きに取り組んでもらうためには、コツコツと積み上げていく信頼関係や、彼らが本当にやりたい方向性を尊重しながら計画を遂行していく姿勢がとても大事になる。」

かめっち「まさにそれがカギだ。自分の関わりがある農家さんは、『農家』という呼び名ではなく、『ライフデザイナー』として、食を起点としたイケてる生活をアドバイスする職業に変わっていく必要があると述べていた。そこまでいかないにせよ、そういった社会とのつながりを明確に持ちたいと思っている農業者は、想像以上に多く存在している感覚がある。」

Hさん「その通りだ。なので自分は、彼らがイベントや実証実験などを行うときに、ひたすらサポート役に回ることに徹していた。それによってメンバーのキャラクターやできることが見えてくるし、もっとシンプルに言えば、お互いのことを好きになることができる。」

かめっち先生の旅はまだまだ続く(毎週月曜日更新)

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