第27回 2025年8月 Famlab8議事録3 ~バナナ園視察~
2026.01.26
かめっち先生が、熊本県八代市の若手農家で結成された一般社団法人「Fam Lab8(ファムラボエイト)」を視察しました。その様子をいくつかの回に分けてお届けします。
バナナ園視察
Tさん「バナナを始めたのは6年ほど前で、それ以前はお米などを中心に行っていた。バナナを始めた理由は、農地を借りる話の流れでハウスももらえることになり、施設で栽培できるものとして、今更八代の地でトマトに参入しても仕方がないと思い、それであればバナナを始めるのもよいのではないかという、そこまで考え抜いた判断…ではなかった。」
Nさん「大阪でバナナをやっている人の所に視察したことがあったが、もう少し背が高かったと思う。これは品種の差か?」
Tさん「そうだと思う。日本でメジャーではない、非常に皮が薄く徒長しにくい品種であるので、そこまで高いハウスにする必要がなかった。」
かめっち「非常に初歩的な質問なのだが、バナナは永年作物なのか?」
Tさん「バナナは地下茎で育つので、ここに生えているバナナは今年限りで枯れてしまう。収穫期は5月から11月までで、この間取れ続けるのはメリットではあるが、真夏などは収穫ペースが上がるため、出荷しきれずに畑に戻す個体もたくさん存在する。また、バナナは3倍体なので、種を作らない。それゆえにクローン的な増殖がメインとなっている。」
かめっち「摘花したり、防除したりといった栽培管理についても教えていただけるか?」
Tさん「本来であれば、大量に花を咲かせたバナナの中で、成熟しきっていない未熟花は取った方が良いと思うのだが、バナナ専業というわけではないので、そこまで手をかけられない事情がある。防除についても、登録作物ではないので農薬を使用することができないが、現状そこまで病気に悩まされているわけではない。むしろアザミウマのような害虫が果実に付着するということが一番の課題になっているので、散水して虫を物理的にはがすような防除を基本としている。また、バナナはかなり花を多くつけるので、果実の重みで枝が折れるということもアリ、紐で上からつってあげるようなこともしている。」
Mさん「そもそもバナナ栽培についてどのように知見を得たのか?」
Tさん「完全な初心者状態で始めたのだが、たまたま一緒に働いていたベトナム人が、バナナの栽培についていろいろなことを知っていたので、その人からいろいろと教わりながらやり方を身に着けていった。」
かめっち「クローンということは、どこかに一番最初の親株が存在するのか?」
Tさん「親株は最初に100株ほど導入したのだが、同じ品種でも苗の品質格差がかなり大きかった。当然クローンなので、品質が悪い個体はそのクローンも品質は悪い。そこで圃場内で品質の評価を行い、A、B、Cの3段階でBないしはCという評価になった個体を除去することにした。この除去方法はドリルを使って地下茎を破壊するというやり方で、結構手間がかかった。」
Mさん「ハウスの遮光率はどれくらいか?」
Tさん「当初はだいたい40パーセントくらいだったと思うが、年数がたって粉塵がついていることも考慮すると今は50%くらい遮光されているのではないかと思う。」
Nさん「収穫はどれくらいの状態で行うのか?また貯蔵施設のようなものはあるのか?」
Tさん「収穫は緑色の状態で、流通も収穫後すぐにヤマト便で行っている。というのもこの品種はエチレン処理を行わなくてもエチレンが出やすい品種で、しかも皮が薄いので、一般的なエチレン処理を行った後に出荷という段取りを踏む間に腐敗が進行してしまうほどデリケートなのだ。」
かめっち「潅水はそこまで必要ないのか?」
Tさん「一応散水用の点滴潅水チューブは導入しているが、ほとんど使っていない。感覚としては虫を除去するための散水で潅水も兼ねられるくらいのイメージだ。」
Rさん「どれくらいの温度がバナナにとって適性なのか?」
Tさん「一応15度が最低温度だと言われているが、私は少し低めに設定して13度くらいまで下げている。少しいじめると糖度が上がり美味しく育つと思っている。」

Aさん「販路は決まっているのか?」
Tさん「一番大きい販路は福岡にあるスイーツショップだ。それ以外に個人的なお客さんもちらほらといるが、今一番期待しているのがスターバックスコーヒーだ。この圃場には堆肥を導入しているのだが、この堆肥が、八代市内にあるスターバックスのコーヒーかすと、バナナの枯れた植物体、そして林さんのWCSを消費している畜産農家の牛糞と、自身の農地から出る米ぬかなどを調合している。スターバックスはコーヒーかすを佐賀県にまとめて廃棄しており、その残渣をHさんが八代のスタバに直接取りに行っている。」
Hさん「特にアイスコーヒーの方が大量に豆を使うらしく、夏は非常に多く残渣が発生する。コーヒー豆はミネラル成分がたくさん入っているという利点がある反面、カフェインが発芽抑制効果を持っているので、カフェイン成分が飛ぶまで完熟に発酵させる必要がある。一方でカフェインは虫に対する忌避効果を持っているので、そのあたりを自然農法的に行えるといいなと思っている。」
かめっち「ただの思い付きだが、果実が育った段階での虫を取るための散水の時の水をコーヒー水にすると、その後のスリップスによる被害が減るかもなと思った。」
Tさん「バナナの面白いポイントとして、枯れるときに土中から大量の栄養を吸収して果てるので、枯死した植物体がバカにならない栄養を保持している。なのでこういった残渣も土に戻してやることで、循環化に対する大きな意味を持つと捉えている。」
車内での会話
Mさん「八代の方はなぜこんなにも挑戦できるのか?」
Hさん「どんな小さな課題でも、課題であると認識して解決のために実際にやってみるという気持ちの強さだと思う。やはりいきなり大きい課題を解決していくのは難しい。だからこそ、小さな成功体験を積み重ねていくことしかないと思っている。」
Mさん「具体的にはどのようなところで小さな挑戦を行っているのか?」
Hさん「4Hクラブによる県内でのプロジェクト事例が70件ほどあるのだが、八代市がその1割を占めている。こういった些細なこともプロジェクト化しようと勧めてくれる県の担当者には非常に感謝している。やはり小さい課題に見えても、そこにはいろいろな事情が存在し、単純な想定では解決にまで至らないという現実も、挑戦なしでは語れない。まずはやってみる、というスタンスに対して背中を押してもらえる環境こそが八代の強みだと思う。」
Mさん「今、仕事で施設トマトやイチゴのスマート化ユニット、特にCO2制御ユニットの利用促進を担当しているのだが、規模的に大きくもなく、過度の設備投資を求めていない現場の状況と、大規模できちんとした品質の規格化を実現するための設備ユニットとがどうもかみ合っている気がしない。八代のトマト農家さんではこういった環境制御ユニットの利用はどれくらい進んでいるのだろうか?」
Hさん「メンバーにトマト農家がいないので断言はできないが、うちのメンバーのイチゴ農家はそこまで精密な制御を行っていないのではないかと思う。植物工場のように、BtoBで4定条件を満たす必要がある時には重宝するのだが、例えばCO2センサーがあってもCO2供給ユニットを購入できないのであればできることが少なくなってしまう、といった話もあるので、個人農家が導入するには少し過剰投資になってしまうのではないかな、と個人的に思った。」
Fさん「泉州の水ナスで施設栽培を行うのはいかがか?岡山ではナスの施設栽培が進んできているが。」
Mさん「泉州水ナスは、い草農家さんと少し似ており、かなり生産者側のこだわりがそれぞれ強いので、規格化・標準化に高いお金をかけるという価値観を持っていない。やはりロットで勝負する市場に向けた業者相手でなければ、このユニットの大きい先行投資に応えられるだけの利益を享受できないという状況が見えてきた。ただ、大阪府としてはそろそろこのシステムの答えを出さなければいけない状況でもあるので、少し頭が痛い問題だ。」
かめっち「アグリスポーツはいろいろな若手人材を呼ぶポテンシャルがあると思うのだが、具体的にはどのような方向性を考えているのか?」
Hさん「まずは引きこもり人材の社会復帰だ。最近リアルなファーミングシミュレーションがものすごく卓越しており、家でも農業技術を極めることができることを知っていただき、そのまま農業に社会復帰してもらう、という導線だ。また、メカニックとしての高専や工業高校人材にも農業に入ってもらいたいし、もちろん農業高校の生徒さんたちにもアグリスポーツの頂点を目指すために、日々の技術を楽しく磨いてほしいという思いもある。」
かめっち先生の旅はまだまだ続く(毎週月曜日更新)