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第26回 2025年8月 Famlab8議事録2 ~い草農家のKさんのお話し~

2026.01.19

かめっち先生が、熊本県八代市の若手農家で結成された一般社団法人「Fam Lab8(ファムラボエイト)」を視察しました。その様子をいくつかの回に分けてお届けします。

い草栽培

Kさん「い草農家を継いで今年で9年目になる。まず簡単にい草の生産工程について説明する。い草は前年の12月から、丸1年かけて株分けを通じた苗作りを行う(種を取って播種していく育苗ではない)。育苗は田んぼ化畑で行うが、自分の場合田んぼに湛水した状態でい草の生育を抑えつつ、徒長しないような育苗を心掛けている。丸1年育苗したのち、1月くらいに生産用の田んぼに移植し、6~7月に収穫するという流れになる。」

かめっち「株分けで育苗となると、最初に株分けしたものと最後に株分けしたもので生育のムラが生じる気がするが、そのあたりは大丈夫なのだろうか?」

Hさん「い草は春先の高温と日照によって一気に伸長する特徴を持つので、苗の時点での生育差はそこまで大きな問題にはならない。ただこの時期の天候が不順になってしまうと収量が激減する。今年は、4,5月の天候があまりよくなかった(特に気温が上がらなかった)ため、生育はかなり厳しかった。今年は平年比較で大体10日ほど遅れているといったことを聞いた。」

Kさん「その通りだ。収量も2割減くらいの不作年だった。」

かめっち「い草はイネ科か?」

Hさん「い草はイグサ科だ。なのでイネ科ほど強くないので、間違えてお米用の農薬を散布すると、い草は枯れてしまう。その反面、稲と同様に水には強い。過去に、干拓地で塩水が多い環境下でどのような作物の栽培を始めたらよいかを考えたときに、先輩である岡山県に相談したところ、い草が塩水に強いということで一気に栽培が始まったという経緯がある。」

い草選別

Kさん「い草は長さが重要になる。具体的には140㎝以上あるとありがたい。その理由は、い草の両端は色が褐変しやすかったり、根本はむしろ白色に近いので、そういった着色が不安定な個所を製品化(畳に)するときに切り落としても十分な長さが残るからである。」

Mさん「い草農家が畳も作るのか?」

Kさん「そうだ。畳問屋はすでに作られた畳を売るのが商売なので、い草農家が畳を作るところまでやる。」

Mさん「畳の織機はい草農家がそれぞれ保有しているのか?」

Kさん「そうだ。い草農家1軒1軒がこだわりを持ってい草の調整(土をまぶして香りをコントロールする)を行っているうえに、畳の作り方も、機械の設定が微妙に異なるので、い草農家が共同で機械をシェアするということが一般的ではない。要はそこまで工程に標準化が進んでいない。」

Aさん「このい草専用の機械群はかなりニッチなシェアだと思うのだが、保守管理の業者は存在しているのか?」

Kさん「実はそこが大きな懸念点だ。最初に紹介した特定の長さのい草を選抜する機械に関しては、構造が非常にシンプルで、最初にい草の束を静置するユニット上で、選び取る長さをハンドル操作で決定し、電源を入れるとモーターが選び取るためのユニットを回転させ、設定した長さの所で爪にあたるユニットがい草をつかみ、均一の長さのい草による束を作るという仕組みなのだが、この爪を作っている業者が国内に存在していないので、ここが壊れてしまうとなかなか苦しい状態だ。」

Mさん「思ったほどモーターが大きくないのに、しっかりと機械が動いているところに知恵の重要性を感じる。束が小さくなってくると、回転ユニットの爪が、設定した長さのい草をキャッチできなくなる気がするが、この辺りはどう対処しているのか?」

Kさん「い草が少なくなるにつれて、静置している台の高さが上がるようになっている。」

Rさん「この機械の動力が完全に見えている感じと、仕組みが単純ながら非常に巧妙な感じは、ピタゴラスイッチに取材してもらうべきだ。茨城県もピーマン関係でピタゴラスイッチに来てもらったことがある。」

畳加工

Kさん「最後に織機の説明をする。まず、織機は4種類あるが、これは製作する畳の大きさによってそれぞれ機械が分かれている。畳の品質を判断する基準に、①色ムラの少なさ、②い草の密度、という2つが存在している。①については先ほど説明したように、十分長さを持つい草を選び、い草の両端が畳本体に使われないようにすることで品質の向上を図ることができる。②については、機械の設定によって折り込むい草の量が調整できるので、そこで管理している。」

Hさん「織機を見てもらうと分かると思うが、畳を作る時にい草は互い違いに編み込むので、い草を供給するユニットが左右それぞれに1か所ずつある。これによって畳の強度が左右対称になるようにしている。」

Nさん「い草の選別に関して、長さ以外にも基準があるのか?」

Kさん「細すぎるものや、長さが十分でも根元の白色部位が大きすぎるもの、組織に痛みが出てきているものなどはあらかじめ廃棄する。ただし、ここもなるべく選抜基準を設けたいと思うが、例えばうちの母ならばこれは残してしまう、といった個人の感覚に依拠した基準になってしまっているのは否めない。」

Mさん「選果あるあるだ。どれだけきっちりマニュアルを作っても、最終的に判断するのは人間だ。」

Kさん「この織機もいまは新たに製造はしていないと思う。やはりい草農家もこの5~10年で500戸から220戸に激減しているので、企業としてもこの斜陽産業に従事し続けるという選択はしづらいはずだ。」

Nさん「さきほど、農家それぞれのこだわりが強いというお話をされていたが、そのこだわりというのは問屋には届いていて、さらには消費者に訴求できるものなのか?」

Kさん「実は、20年ほど前まではい草農家と問屋が会話することすらタブー視されているくらい分業化がはっきりしている産業だったのだが、最近のインターネット発達によって、い草農家と畳問屋が直接コミュニケーションを取れるようになった。ただ、こだわりがそのまま消費者の満足度につながるような状況には達しておらず、畳は畳でしょ、という認識にとどまっているのではないかと感じている。」

Aさん「BtoC化に可能性は感じるか?」

Kさん「最近、全国の畳問屋の方と話す機会を増やしていこうと動いており、その中で消費者と近い問屋さんもいらっしゃるので、いろいろと新しいことを始めていきたい気持ちはあるが、まだ市場開拓フェーズなのでそこまで確固たる根拠がある状況ではない。畳といっても、家庭用もあればお寺用もあるので、まずは今までのお客さんとの関係性をより深めていき、我々のノウハウが顧客満足度とうまくかみ合うようなサプライチェーン構築を、こういった視察の機会などもうまく活用して目指したいと思っている。」

かめっち「い草として販売することもあるのか?」

Kさん「ほんの一部だが存在する。例えば、い草農家の設備では作れない畳の注文があった場合は、い草のみを供給することもある。畳として利用されないい草は基本的には廃棄されるだけなので、この廃棄分を収益化できないか、ということも考えている。」

Aさん「famlab8さんの所有している日本家屋に飾ってあったい草が非常に香りが良く、見た目にもおしゃれだと思ったが、こういうディフューザー的な利用は考えていないのか?」

Kさん「最近はカラーリングしたい草の販売などにも展開したいと思っているが、イミテーション的な利用を始めたわけではない。ご意見をありがたく参考にさせていただく。」

Fさん「香り成分はどれくらい残存するものなのか?」

Kさん「空気にさらしていると、一般的には1~2か月程度だと思うが、直射と空気の流れへの接触を避けて保存すれば2年は持つと思う。畳なども作った後は袋などで包んでおけば、むしろ熟成されて香りが良くなるということもある。」

Fさん「それならば、熟成度による違いを周年で楽しんでいただくサブスクサービスも展開できそうだ。八代にクルーズで観光に来たインバウンドなどに対して売り込むと面白い気がする。」

Rさん「話は戻るが、この織機もピタゴラスイッチに出した方がいい。絶対に面白いし、こういった素朴な機械の方が使いやすいという農業現場の声も届けることができる。」

かめっち先生の旅はまだまだ続く(毎週月曜日更新)

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